馬の歩き方

馬術における馬の歩き方について

馬術において、馬の歩き方や走り方(4本の肢の動きのパターン)のことを「歩法(ほほう)」または「歩様(ほよう)」と言います。
馬の歩き方は、「常歩(なみあし)」、「速歩(そくほ)」、「駈歩(かけあし)」の3種類に分けられ、駈歩の速度がさらに速くなった状態(全速力で走っている状態)を「襲歩(しゅうほ)」と言います。

対称歩法

左右の肢の動きがほぼ1/2の周期でずれている歩法を、「対称歩法」と言います。

常歩(なみあし)

普通に歩いている時は4本の足が交互に着地する4拍子の歩法です。
常に2本あるいは3本の肢が地面に着き、体重を支えています。なお、常歩が早くなると1本の肢で体重を支えるようになります。
肢の動く順序は右後肢、右前肢、左後肢、左前肢。
速度は通常、分速110メートルほどで、騎乗者にはごく軽い前後の揺れが伝わる程度です。

速歩(そくほ)

この歩き方は人間が普通に歩くように、対角線上の足が交互に動きますので、2拍子となり、小走り程度の速さになります。
2節の歩き方で、右前肢と左後肢(右斜対肢)、左前肢と右後肢(左斜対肢)がペアになってほぼ同時に着地・離地する「斜対歩」と、右前肢と右後肢(右側対肢)、左前肢と左後肢(左側対肢)がペアになる「側対歩」とがあります。厳密には4本の肢の着地には時間差があり、常歩と同様の順序です。
速度は通常、分速220メートルほどで、騎乗者には強い上下の揺れが伝わります。

非対称歩法

左右の肢の動きが1/2の周期でずれていない歩法を、「非対称歩法」と言います。非対称歩法においては、左右の肢のうち遅れて着地する肢を「手前肢」、先に着地する肢を「反手前肢」と言い、右肢が手前の場合を「右手前」、左肢が手前の場合を「左手前」と言います。

駈歩(かけあし)

この走り方だと3拍子となります。障害を飛んだり草原を走ったりする速さとなります。
3節の歩き方で、3本の肢が接地している時期と、4本の肢すべてが地面を離れている時期とがあります。左右どちらの前肢が前に出るかで、「左駈歩」、「右駈歩」の区別があり、駈歩を遅い襲歩に区分する場合もあります。
駈歩には後肢が先に着地するものと、前肢が先に着地するものとがあり、前者の着地順序は襲歩と同じく右手前と左手前とがあり、後者の着地順序は対称歩法と同じです。
速度は通常、分速340メートルほどで、騎乗者には、ブランコのような大きくゆったりとした前後の揺れが伝わります。

襲歩(しゅうほ)

競馬でよく見る走り方で、馬は全速力で走っている状態です。リズムは4拍子となります。
全速力で走る際の馬の歩き方です。
左右の後肢の動くタイミングが近く、また左右の前肢の動くタイミングは離れています。4節の歩き方で、左手前と右手前があり、前肢の手前肢が走る方向を調整し、後肢の反手前肢が前方へ身体を推進させる働きをします。また、「交叉襲歩」と「回転襲歩」があります。
襲歩においては、3本以上の肢が接地している時期がなく、4本いずれもが接地していない時期(空間期)がある。
左(右)手前の交叉襲歩は、肢の着地が右(左)後肢、左(右)後肢、右(左)前肢、左(右)前肢の順。
左(右)手前の回転襲歩は、肢の着地が左(右)後肢、右(左)後肢、右(左)前肢、左(右)前肢の順。
通常は交叉襲歩を用いて走っていますが、手前を変えるとき、あるいは走り始めてからある程度のスピードが出るまでは回転襲歩を用いて走ります。
馬術の基本となる「三種の歩度(常歩、速歩、駈歩)」には含まれません。

特殊な歩様

馬場馬術において行うもので、調教を受けた馬および訓練された騎手によらないと行うことができないものです。

ピアッフェ

「ピアッフェ(piaffe)」は速歩の一種で、極端に収縮し前進を伴わない速歩です。その場で足踏みをするような動作を行います。難度が高く、馬・騎手ともによく訓練されていないと行うことができません。

パッサージュ

「パッサージュ(passage)」は速歩の一種で、非常に収縮した速歩です。ピアッフェと似ていますが、前進を伴う点で異なります。ピアッフェほどではありませんが、難度が高い歩様です。

ピルーエット

「ピルーエット(pirouette、後肢旋回)」は、運動中に後肢を軸としてその場で旋回する歩様です。一般的には常歩または駈歩の状態から行います。360度旋回する場合を「ピルーエット」と言い、180度旋回する場合は「ハーフピルーエット(半ピルーエット)」と言います。

横足(よこあし)

「横足(よこあし、half-pass)」は、馬の肢を交差させながら斜めに移動する歩様です。このとき、馬の首は進行方向側に屈曲します。常歩・速歩・駈歩で行います。

斜横足(ななめよこあし)

「斜横足(ななめよこあし、Leg-Yield)」は、横足と同様に馬の肢を交差させながら斜めに移動する歩様ですが、馬の首は進行方向と反対側に屈曲する点で異なります。常歩・速歩で行います。

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