種牡馬と繁殖牝馬

「種牡馬(しゅぼば)」とは

「種牡馬」とは繁殖用の牡馬(オスの馬)のことです。「種馬(たねうま)」とも言います。
牛、豚、羊などの畜産では優秀な種牡の精子を採出して凍結保存することが許されているが、競走馬に代表される馬産は一般的に人工授精や凍結精子の利用などによる人工的な妊娠手段を拒んでいます。
凍結した精子は保存や運搬、売買が容易ですが、馬産においては常に生きた種牡馬が生きた繁殖牝馬(種牝馬)に直接交配をする必要があります。
したがって、優秀な種牡馬があっても繁殖牝馬にとって移動不可能な地域にいては交配ができないし、またいずれは寿命で死んでしまうため、生産界は常に新しい優秀な種牡馬を創出し発見する必要があります。
また競走馬の場合、交配が行われてから、子供が誕生して競走年齢に達して一定の成績が判定できるまでに4年から5年ほどの時間を要することから、新しく種牡馬になったものが優秀であるかそうでないか判明するまでにタイムラグが生じます。
これらの事情により、種牡馬の市場は他の畜産市場よりも流動的です。

「繁殖牝馬(はんしょくひんば)」とは

「繁殖牝馬」とは、子馬を産むために牧場に繋養されている牝馬(メスの馬)のことです。「肌馬(はだうま)」や「ブルードメア(broodmare)」とも言います。
競走馬の生産牧場にとって、繁殖牝馬の存在そのものが生産牧場の機能であると言っても過言ではありません。
繁殖牝馬は牧場に繋養され、2月から7月にかけて一定の周期で発情します。
発情した機会を捉えて牧場が契約した種牡馬のいる「スタリオンステーション」などに連れて行き、種牡馬と交尾させることで種付けをします。
種付け後、1ヶ月ほどで受胎の有無が確認でき、出産後は1週間ほどでまた発情し、新たな種付けを行えるようになります。
牝馬が発情していない時期に牡馬が近寄ると後足で蹴ったりすることがあり、高価な種牡馬に怪我をさせることになりかねません。
このような事態を避けるために牧場や種牡馬繋養施設が飼っているのが「当て馬(あてうま)」です。

「当て馬(あてうま)」とは

当て馬(あてうま)

「当て馬」とは、馬の種付けの際に牝馬の発情を促し確認する行為や、当該行為のためにあてがわれる牡馬自体を指す通称です。
馬産の用語としては「試情馬(しじょうば)」と言います。
サラブレッドの生産牧場には、一般的に、現役を引退した牡馬が当て馬専用に飼育されています。
種牡馬場などにおける種付け前の当て馬としては、人気のない種牡馬・引退した種牡馬などのうち気性の温和な馬を使用します。
当て馬により牝馬の発情を確認する際は、「エプロン」と呼ばれる腰当てが当て馬に装着されたり、壁越しに当て馬を近づけるなどされ、実際に交配が行われないように配慮されます。
牝馬の発情の有無が確認されると当て馬は牝馬から引き離されます。
しかし性欲が高まった状態で引き離されることによる当て馬のストレスを解消するために、種付けを行うことも稀にあります。
また数少ないケースではありますが、種牡馬としての登録が継続されていれば、代用種牡馬としての役を果たすこともあります。
これは種付け料が無料であるため、また、種付けをする際に事故が起きても損害が少ないため、シンジケートやスケジュールなどの制限も受けないためです。

「せん馬」とは

せん馬

「せん馬」とは、去勢された(睾丸を摘出された)雄馬のことです。
畜産では、家畜の性質を大人しくし、上質の肉を得るようにするために去勢をしばしば行われています。
馬においては、陰睾(発生分化した睾丸が陰嚢内に下降しない異常な状態)や病気の治療のために去勢を実施することもありますが、一般的には、乗馬や使役馬等として利用する際、特に繁殖季節に取り扱いやすくするために行います。
日本においては明治時代になるまで牡馬を去勢する習慣が存在しなかったとされています。 
競走馬については、気性が悪くて、それを矯正できず、そのため競馬で実力を発揮できないと判断されるような場合等に、最後の手段として去勢することがあるのです。
日本中央競馬会、地方競馬全国協会に競走馬として登録された馬においては、去勢した雄馬の性は「せん」と記載され、「雄」とは区別されています。
日本や英国では、3歳馬のクラシックレースなど特定の競走に「せん馬」の出走を禁じています。
より速い馬を作り、その種を残していこうとする競馬の世界ならではの決まりなのです。
なお、日本では、日本軽種馬登録協会が血統登録する馬の性の表記は雄及び雌に限定されており、性別の判定については、外部生殖器構造物を肉眼上で判定しています。
一般的にせん馬については、去勢手術を実施した獣医師の去勢証明書の届出により、その事実を同協会が交付する血統登録証明書に付記するが、性の表記はあくまでも雄のままで取り扱われます。
せん馬で活躍した競走馬は、米国のエクスターミネーター、ケルソ、フォアゴー、ジョンヘンリーが有名で、わが国ではレガシーワールド、マーベラスクラウンなどがいます。

競走馬の兄弟姉妹関係

父親が人気のある種牡馬であるような場合には、父親を同じくする馬の数は膨大なものとなります。
一方で母親を同じくする馬の数は限られます。そのため、一般に競走馬で「兄弟姉妹」といえば、同じ繁殖牝馬から生まれた馬を指し、種牡馬が同じだけでは兄弟姉妹とは見なされません。
父親も母親も同じ馬の場合を特に「全兄弟(全兄・全弟・全姉・全妹)」と呼び、母親だけが同じ場合は「半兄弟(半兄・半弟・半姉・半妹)」と呼びます。

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